「エネルギーシステム学」について
このWEBページで提唱しようとしている「エネルギーシステム学」では、社会におけるエネルギー需給を分析やデザインの対象として取り上げます。ここでエネルギーとは、我々人間が日常生活で利用する、化石燃料、原子力、再生可能エネルギーなどの1次エネルギー(エネルギー資源)、およびエネルギー変換によって得られる電力、石油精製製品、石炭製品、都市ガス、水素などの2次エネルギーを指します。
人間は、多種多様な1次エネルギー資源を、これも多種多様な2次エネルギーに変換して、多種多様な目的に利用します。もし、消費するエネルギー資源や利用時に排出される廃棄物の量に制約がなければ大きな問題は生じないのですが、資源の量が有限で廃棄物を排出する環境の容量も有限なため、エネルギーの利用の際には様々な問題が発生します。化石燃料の利用は産業革命に始まったと考えていいでしょうが、その後、世界大戦、公害問題、石油危機、中東戦争、そして今話題になっている地球温暖化などの数多くの問題の原因となってきました。
エネルギーの利用で特に興味深いこととして、言うまでもないこととは思いますが、エネルギーの利用の意思決定主体が人間であることが挙げられます。77億人に上る現在の個々の人間だけではなく、その組合せである企業や国という空間分布があり、さらに過去から将来に至る時間軸の上での人間が対象となるので、その問題の規模の大きさは容易に想像できることと思います。人間の文化や価値観も多様で、それが時間と共に変化することから、ややもするとどこから手をつけていいかが分からなくなります。そこで「エネルギーシステム学」では、個人、自治体や企業などの組織、そして国などの多様な意思決定主体がエネルギーに対処するための考え方の道筋を提示することを狙いの一つとします。
ところで、これも大切なことですが、「エネルギーシステム学」では、そのエネルギー需給の問題を、特に「システム」の視点から考えます。「システム」、それは一言でいえば「互いに相互作用する要素の集合体」として定義されます。要素間の相互作用の結果、各要素の挙動が変化し、その要素の挙動の結果として、システム全体の挙動が創生されます。そして全体の挙動は個々の要素に影響を及ぼします。このフィードバック構造が大規模システムの分析・設計を難しくしています。さて、その要素には、意思決定主体である人間や企業、国はもちろん、資源、技術、インフラ、社会制度など、人間以外の様々なものも含まれます。そして、要素の組合せの数だけ意思決定行動があり、そのそれぞれの意思決定のための「視点」が無数に存在します。視点を変えると見えるものが変わることは我々も日常生活で経験していることですが、この多様な視点の存在を考慮することが、「エネルギーシステム学」の興味深い特徴だと考えています。
この「エネルギーシステム学」が具体的にどのような学術分野となるのでしょうか?この点についてはこれからゆっくりと考えることとして、まずはそのWEBページの最初のこのページ(ホームページ)で「エネルギーシステム学」の構築開始を宣言させていただきます。何か宣言しないと物事は始まりませんからね。
正直に申しますと、作成者本人も、事前に「エネルギーシステム学」の全体像は把握できていないと思います。そのようないい加減な状況でのWEBページ作成のスタートですが、作成者の定年退職を機に、折に触れての考察の忘備録として作成していきたいと思います。そのため、当分の間は、読者にとってわかりやすいものにならないと思いますが、その点はご容赦ください。
それでは、ゆっくりと始めることにします。
エネルギーシステム学研究所代表
京都大学名誉教授
手塚哲央(てづかてつお)
関連リンク:エネルギー・資源学会:https://www.jser.gr.jp/society/message/
Researchmap:https://researchmap.jp/TezukaTetsuo