エネルギー需給の基礎
エネルギーフローについて
この図は、エネルギー需給システムにおける「エネルギーの流れ(エネルギーフロー)」を示しています。
我々が初めてエネルギーとして利用できる資源を一次エネルギーと呼び、この一次エネルギーをエネルギー変換することにより、人類にとって使いやすく加工された、電力、都市ガス、石油製品などの二次エネルギーが得られます。もちろん、二次エネルギーから更に別の二次エネルギーを作ることもあります。そして、この二次エネルギーを利用者のところに運んで、また必要があれば貯蔵して、種々の目的に利用します。
便宜上、エネルギーを消費する分野は、民生部門(家庭部門と業務・サービス部門)、輸送部門、産業部門(製造業部門)に分けられます。そして、エネルギー需給システムの設計の目的は、まさに、この図の詳細を定量的に決めることにあると言えます。
エネルギー需給と三つの世界
エネルギーの利用は、通常、技術を取り扱う自然科学、その中の工学と密接な関係を持つと考えられています。しかし、エネルギーを使うのが人間である以上、何のためにエネルギーを使うのか、エネルギーを使うための社会での制度や規則として何が必要なのか、などの問題についても、エネルギーの利用に際して考える必要があります。
近年話題になっている、電力システム改革は、電力需給に関わる様々な技術的な可能性と限界を踏まえた上での社会科学の分野での議論です。上の図に示すように、学問の分野は、音楽や美術などの芸術創作に関わるものを除くと、大きく、自然科学、人文学、そして、社会科学に分けられます。
「科学とは何か?」については、多くの書物もあるのでここでは論じないこととして、一例として、将来エネルギー需給システムの政策策定に関わる問題をこの3つの学術分野と結びつけて考えると、あくまでも一例ですが、
- エネルギー資源の採掘、精製、利用などに関わる技術的可能性に関わる議論は自然科学の分野、
- 人間にとって望ましいエネルギーの利用方法の選択などの、人間社会の価値観に関わる問題は人文学の分野、
- 上記二つの議論から得られる、「技術的に可能で」、「人間にとって望ましい」エネルギー需給システムを、社会で普及させるための政策などの議論は、社会科学の分野、
での課題となります。
このように、エネルギー需給の問題を考えることは、広く、自然科学、人文学、そして、社会科学に関係することが理解できます。この広範な領域にまたがる「エネルギー」に関する学問、すなわち、「エネルギー学」が新しい学問分野であることは、検討対象を絞ることにより深く研究してきた、今までの「科学」とは異なった考え方が必要となることは感じていただけると思います。
いわゆる理系の学生さんに、「エネルギー研究では哲学の勉強も大切だよ」と話すと不思議そうな顔をされることがあります。でも、上の図を見ると、人の生き方を考える哲学を学ばずしてエネルギー研究のできないことは、理解できるのではないでしょうか?そして、まず大切なことは、各個人が、そのような種々の学術分野に関する内容に興味を抱くことだと思います。